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橋之介のブリッジれぽーと

橋之介のブリッジれぽーと(26)


 

 

みなさん、こんにちは!橋之介です。
クリスマスはどうだった?
ボクたちはね、みんなで教会のクリスマスの劇に出たんだよ。教会に通ってるみんなといっしょに、クリスマスのお歌も歌ったよ。とっても楽しくて、うれしい気持ちになるんだ。
もちろん、最後はブリッジパーティー。クリスマスっていいね!
「えーっと、これは5メイクするなあ」
「正解! 橋之介君、すごいですね。だんだん、考える時間が短くなってますよ」
12月はじめのある日の放課後。ボクは、ツキノワ君といっしょにハンドレコードとにらめっこしてた。
あのね、このごろハンドレコードでブリッジの勉強するのが、ボクたちのブームなんだ。今年のキャンプ大会のあと、先生たちがハンドレコードの解説してくれたでしょ。あれがおもしろくって、それからはハンドレコードをもちよって、ときどきみんなで研究してるの。このハンドはコントラクトは何になりそうとか、 どういう手順でプレイするといいのかとか、いくつまでメイクするとか、みんなでワイワイね!大人のブリッジプレイヤーみたいで、カッコイイでしょ?
ホントのこと言うとね、ボクにはちょっとむずかしいこともしょっちゅうなんだ。けど、ツキノワ君やほかのみんなといっしょにやるといろいろ教えてもらえる し、なんてったって楽しいんだよね。学校のお勉強だと、こうはいかないんだけどさ。それにカードを使わなくてもいいし、4人いなくても、ううん、たった1 人だってブリッジの勉強ができちゃうでしょ。学校はカードを持っていって遊んじゃいけないから、学校ではハンドレコードでブリッジってわけ。


次のハンドはコントラクトは何になるでしょうねえ?」
「えーっと、ディーラーのNが17HCPのバランスハンドだから、まずは1NTってオープンするよね」
「そうですね。Eはパス、Sはメジャーがどちらも4枚ずつだから、ステイマンしますよね」
「あ、う、うん。こういう手はステイマンを忘れちゃいけないね」ボクは、ちょっとしどろもどろになっちゃった。
 
 
 

そうそう、パートナーが1NTオープンしてメジャーがあるときには、2クローバーってステイマンするんだったね。ボク、また忘れてた~。でも、ちょっぴり恥ずかしかったから、忘れてないふりしちゃった。たまには知ったかぶりしてもいいよね。
ボクはこのハンドをじーっと見つめて、オークションがどうなっていくか想像してみた。

 

「Nはが4枚だから2だよね」
「そのあとのSは3とゲームに誘うか、あるいは4と直接ゲームをビッドするか」ツキノワ君がそう言ったので、ボクはびっくりした。
「えっ?Sはたったの6HCPしかないからパスじゃないの?」「いや、パスはないでしょう。ダミー点を入れると9点になりますから…」「ええっ、ダミー点ってなに?ボク、知らないよう~」
「ああ、そういえば橋之介君のお母さんのレッスンではまだ説明がなかったかもしれませんね。ダミー点というのはですね、自分のハンドを評価するとき使う点数なんです」
ツキノワ君はそう言って、紙と鉛筆を取り出して何やらさらさらと書き始めた。
 
ボイド=5点
シングルトン=3点
ダブルトン=1点
 

「ボイドやシングルトンがあるとラフできるから、スーツコントラクトのときはHCPが少なくてもトリックを勝つことができるでしょう。だから、パートナーとフィットがあるときは、このダミー点を加算して、自分の手の価値の見直しをするんです」
「なあるほど!」ボクはぽんと手をたたいた。「ラフのパワーを点数に直して、足しちゃっていいってことなんだね。すごいや!」
「そのとおりです。でも、NTコントラクトのときにはこれは使えませんから、気をつけてくださいね。あくまで、ラフできるパワーを評価してのおまけの点数ですから」
「うん! わかった。それにしても、ツキノワ君はいつのまにダミー点のことを覚えたの?」
「両親に教わったんですよ。ほら、うちの両親はすっかりブリッジにはまっちゃてるでしょう。家ではときどき3人ブリッジもしているんです。で、新しいことを習ってくると、あれこれボクにも教えてくれるんです」
へえ、そうだったんだあ。「ツキノワ君、おうちでも学校のお勉強だけじゃなくて、ブリッジのお勉強もどんどんしているんだね。ボクも見習わなくっちゃ!」
「えっと、じゃあこのハンドはがフィットしたから9点の価値がある、だから、2をパスしちゃダメで、3か4ってことなんだね」ボクたちはまたハンドレコードの研究に戻った。
「そうそう、橋之介君、さえてますね」「い、いや、そうでもないけど…」ツキノワ君にほめられて、ボクはちょっぴり照れちゃった。
「ボクなら4って言うよ。9点もあるんだから、ゲームに挑戦しなくっちゃ!」
「賛成です。気が合いましたね。それにハートがQJ109と続いていることも、いい材料ですから」
「じゃあ、コントラクトはNの4。この手だといくつメイクするかなあ」
「まずはEのリードですね。クローバーはAがあるから出しにくいので、ハートの8が出てきそうですね」

 

「橋之介君、ツキノワ君!クリスマスは何か予定ある?」そこへ、エリーちゃんがぴょんぴょん弾んでやってきた。
「ボクはべつに…。パパとママに何も言われてないけど」いくつメイクするのか数えるのにちょっと手間どってたボクは、さっそくエリーちゃんに答えた。けれど、
「エリーちゃん、ちょっと待ってください。いま橋之介君が考えてるんです。さ、橋之介君、続けて。ハート はK を捕まえられる形になっているし、自分でフィネスしなくて済んだから、ちょっと得しましたよね」そう言って、ツキノワ君がエリーちゃんを止めた。
えーっと、だからハートはノールーザーってことだよね。とすると、次は切り札を狩ってみて… 、切り札の分かれはいいから、えーっと、えーっと…。
「ねえ、聞いてよ!」エリーちゃんはイライラした声で言った。「2人とも、あまり教会に行ったことないでしょう? 今度、教会学校でクリスマスの劇をするんだけど、いっしょに出ない?クリスマスの歌もいっしょに歌おうよ」
ナイス、エリーちゃん。ツキノワ君の言葉もおかまいなしだね。でも、いまなんて言った?
「え、教会にも学校があるの?ボクはお休みの日には学校に行きたくないなあ」
「教会学校にはこなくていいわよ。劇の練習には2回か3回出なきゃならないけど。ホッキョク君も今年は出てもいいって言ってるし、友だちも誘えるの。ね、たまには教会のクリスマス会に来てみなさいよ」
するとツキノワ君が、「そうですね、クリスマスはキリスト教の行事だけど、教会に行ったことはないな。教会ではどういうふうにするものか、見てみたいです。部外者が行ってもいいんですか?」なんて言い出した。
「たぶん両親もいいと言うと思うんです。教会のクリスマスを経験させてもらうチャンスなんてあまりないですからね」
「さすがツキノワ君、ま、そんなにカタく考えなくていいんだけどね。ホッキョク君のおうちでも行ってる教会だから、今年はみんなもクリスマス会に誘おうって話になったの」「あのう、ボクも行かなきゃダメ?」「当たり前でしょ!劇と歌のあとはパーティーもあるわよ。もちろん、お菓子もたっぷり」「え、そうなの?じゃ、パパとママにきいてみようかな」「やった!きっと大丈夫ね!」

 

こんなわけで、ボクたちはエリーちゃんやホッキョク君が家族で通ってる教会のクリスマス劇に出ることになったの。ボクんちでは、たまにパパの行く教会に行ったことがあるけど、ツキノワ君ちはクリスマスは家でしかしたことがないから、パパとママも喜んでるんだって。たまには教会クリスマスもいいよね。
カーチャちゃんちは、いつもは別の教会に通ってるから、今回は歌のときだけ参加することになったの。自分たちの教会でもクリスマス会の準備があるんだって。そうだよね。
本番の前に、何回か教会に集まって劇の役を決めたり、練習したりしたんだ。クリスマスの劇っていうのは、イエスさまが生まれたときのことを劇にして見せるんだよ。クリスマスって、キリストの誕生日のことだもんね。
オドロキだったのは、エリーちゃんがマリアさまの役だったこと! 「おだやかで、やさしくて、かわいい乙女」のマリアさまだよ!いつものエリーちゃんを知ってるボクは、思わず「え~ そうなの? マリアさまって強かったんだね」って大きな声を出しちゃって、教会学校の子どもたちや先生たちにクスクス笑われた。エリーちゃんはマリアさまの役も忘れて、いつものようにボクの腕をバシッとたたいた。
「あ、ほら。そういうの『美脚をあらわす』って言うんだよ~」腕をさすりながらそう言ったら、みんな今度はげらげら笑い出した。
「橋之介君、それを言うなら『馬脚をあらわす』ですよ。美しい脚じゃなくて、馬の脚」とすかさずツキノワ君。え~ 、そうだっけ? 美脚のほうがいいんじゃない?
「さ、笑うのはやめて。美脚のマリアさま、いらっしゃい。舞台ではおしとやかにね」先生に呼ばれて、エリーちゃんは肩をすくめて走って行った。
「今日は叱られませんでしたね。ナイス言いまちがい」ツキノワ君がぽんぽんと肩をたたいてくれた。でも、エリーちゃんも「美脚」って言われて、うれしかったのかな?えへっ、ほんとにナイスだったかも?
ホッキョク君は、王様の役になったよ。ボクたちはゲストだから大きな役はないと思ったけど、ツキノワ君は3人の博士の1人に決まって、とってもうれしそうだった。イエスさまが生まれたあと、遠い東の国からお祝いをしにやってくる博士だね。
そしてボクは、なんの役だと思う? なんと、天使の役だよ。イエスさまの誕生を野原にいた羊飼いに教える天使たちの1人。みんなで天使の歌を歌うの。天使だなんてなんだか照れるけど、天使の歌には振り付けもあるから、恥ずかしがってなんかいられない。学習発表会で「怪ク マZ 」をやったこともあるボクだもの、がんばるぞ!
教会学校には、ベアーズスクールの子たちもたくさんいて、あまり緊張しなかった。みんなすぐ自分のセリフをおぼえて、全体を通して練習したんだ。ツキノワ君も真面目な感じが博士にぴったりで、けっこうなじんでたよ。エリーちゃんは演技力を発揮して、別の子のようにおしとやかににやってた。まるでカーチャ ちゃんみたいだったよ。

 

本番は日曜日の午後だったから、パパとママとウィニーも見に来てくれた。学校のお友だちのご両親もたくさん来てたから、大人たちは静かにあいさつしたり、おしゃべりしたり。うん、これなら学習発表会とあまり変わらないや。
教会の聖堂には大きなクリスマスツリーが飾ってあった。本物の背の高いモミの木で、キラキラしたライトが一面に飾ってある。でも、赤や青の色々な色はな くって、白い光のライトだけ。それでも教会では、じゅうぶんきれいだったよ。これはパーティーじゃないから、あんまりハデな飾りはおかしいよね。おごそかな感じが教会にぴったりじゃない?
ボクたちの劇は大好評だった!エリーちゃんのおすましマリアさまのところに大天使がやってきて、イエスさまがもうすぐ生まれると教えると、エリーちゃんは神様にありがとうとお礼を言う歌を歌ったんだ。エリーちゃんは歌もとっても上手だった。
ホッキョク君の王さまは迫力満点で、ちょっとコワいくらいだったよ。ツキノワ君は声が少しかすれたけど、セリフも動作もバッチリだった。ボク?もちろん、踊りも歌もサイコーだよ。ウィニーには「天使さまにしてはかなり丸かった」なんて失礼なことを言われたけど、まあ気にしない気にしない。
それから、クリスマスの歌をみんなで何曲も歌ったんだ。お客さんたちもにこにこ顔でいっしょに歌ってて、ほんとに楽しくなっちゃった。ボク、歌手になるのもいいかなあ。そのあとはピアニストやバイオリニストの人が演奏したり、聖書の朗読があったり、キャンドルサービスがあったりして、気分はおごそかなクリ スマス。教会ってなんだか静かな、やさしい気持ちになるものだね。ボク、来年も教会でクリスマスしたくなっちゃった。
クリスマス会の後は、ホールにうつって、お待ちかねのパーティー!子どもたちにはお菓子がたあくさん用意してあったよ!ママたちが持ち寄ったケーキやパイ、サンタさんや鐘、星の形のクッキー、プディングなんかがテーブルいっぱいに並んでて、みんな幸せな気分で食べたり、おしゃべりしたり。

気がつくと、ボクのママのまわりに学校の子のママたちが大勢集まって、楽しそうに笑ってる。「ハナさんのブリッジ教室のこと、聞いてるわ。私もぜひ教えていただきたいと思ってたの」「私もちょっとだけやったことがあるのよ。お仲間がいれば、またやりたいわ。ご紹介してくださる?」
あれれ、ママ大人気じゃん!またママのブリッジ教室が始まるのかな?「ねえ、今夜うちにいらっしゃいよ。みんなでブリッジパーティーしましょう」ホッキョク君のママの声に、大人たちがうれしそうにざわめいた。
やったー、今夜は大人も子供もブリッジパーティーだ!

 

 
今日のきょうくん(教訓)
パートナーとフィットがあったら、ダミー点を足そう。
 
ダミー点は…
ボイド=5点
シングルトン=3点
ダブルトン=1点
あらわすのは馬脚、美脚じゃない。
教会のクリスマス、サイコー!
 
 
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