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さっきはみんなが帰って急に寂しくなっちゃったけど、お兄ちゃんたちと遊んでもらえることになって、なんだかわくわくしてきた。それにしても、お兄ちゃんたちの手はおっきいなぁ。ボクの手はちっちゃいから、カードを持つのがとても大変なんだ。あんなふうにかっこよくカードを持てるように、ボクも早くおっきくなりたいなぁ。 |
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「こらこら。人の手元を見ちゃだめだよ」ボクがじーっと隣りのお兄ちゃんの手に見とれてたら、そのお兄ちゃんがウィンクしながら言った。
「え?」
「ブリッジする時はね、人の手元を見ちゃいけないんだ。そんなつもりはなくても、カードを覗いているみたいに見えるからね。テーブルに出たカードだけを見てプレイしないと、ずるになっちゃうんだよ」ボクは、愛子先生にも同じことを教わったことを急に思い出して、真っ赤になっちゃった。
「そうだったね。さっきも教わったのに忘れちゃった。次からは気をつけるね。ボ、ボク、お兄ちゃんみたいにかっこよくカード出したいなって、見とれてたんだ」
「最初は何も知らないんだから、いいんだよ。失敗しながら、少しずつ覚えようね」お兄ちゃんが笑っていたんで安心した。
ぼんやりしてると、教わったことを忘れちゃいそう。でも、失敗してもいいんだ。 |
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お兄ちゃんたちと遊んでいたらあっという間に時間がすぎて、パパが迎えにきた。
「ビクター、BJは君の息子だったのか」
「おやおや、橋之介と遊んでもらっていたんですか。それはそれはどうもありがとう」
パパがお兄ちゃんたちにお礼を言った。パパもお兄ちゃんたちと知り合いだったんだ。
「じゃあ、僕たちはこれから横浜見物に行くね。楽しかったよ、BJ。またね」
「どうもありがとう。ボクも楽しかったよ。さようなら」
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「どうだった?」クイーンズスクエアの方に歩きながら、パパが聞いた。
「うん。最初は覚えることがいっぱいで、どんどん難しくなるような気がしてもうダメ~って思ったよ。でも一緒にいた人たちが楽しそうだったから、ボクもなんだか楽しくなっちゃって。そうしたら難しいと思ったことなんかいつの間にか忘れちゃった。そのうち、やり方は覚えたって気がついたよ」
「そうか、よかったな。それに、オランダチームの人に遊んでもらえたなんて、ラッキーだったな」
「お兄ちゃんたち、かっこよかったー。出たカードを全部覚えているんだ。それに、ボクが何を持っているかもだいたいわかるみたいなんだよ。絶対、覗いたりしてないのに。テレパシーでもあるのかな?」
「ははは、テレパシーはいいな。そうじゃなくて、あのお兄ちゃんたちくらいに上手になると、他の人が持っているカードをかなり正確に予測できるようになるだけだよ。テレパシーみたいにね」
「ボクもできるようになるかな」
「うんと上手になったらね」とパパは言ったけど、ボクはやっぱりお兄ちゃんたちには、絶対パパの知らないテレパシーがあるんだって思った。きっとそうだ。訓練したら、ボクだってテレパシーで相手のカードがわかるようになるかもしれない!がんばらなきゃね。
なんだか、急におなかがすいてきた。
「パパ、ボク、おなかペコペコだよ。お昼はお子様ランチがいいな!」今日はとっても楽しいな。
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