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橋之介のブリッジれぽーと

橋之介のブリッジれぽーと(2)

 

ボクね、ブリッジを習い始めたばかりなんだよ。
まだよくわからないけど、とっても楽しいよ。これから、ボクがブリッジを勉強していく様子をちょっとずつ紹介していくので読んでね。


注)NECブリッジフェスティバル:毎年2月、横浜市のパシフィコ横浜で開催される国際競技会。第10回を迎えた2005年は16カ国約250名が参加。2006年は2月7日~12日に開催予定。
 
「あら、1人になってしまったの?」愛子先生がやって来た。
「みんなお昼だから、そろそろ終わりにしようって。パパがお昼休みになるのは1時過ぎ頃って言ってたから、それまでここにいないと」ボクは時計を見ながら言った。
「他のテーブルは一杯だけど、後ろで見てる?」愛子先生がそう言った時、背の大きい外国の人が4人、教室の会場にやってきた。
「あら、オランダチームの人たちだわ。ミニブリッジはオランダが発祥の地なのよ」
愛子先生はそう言ってオランダチームの人たちをボクのテーブルに連れてきた。
「こんにちは。ミニブリッジを使った体験教室をやってるって聞いて、見学にきたんです」オランダのお兄ちゃんの一人が愛子先生に言った。「どうぞ、ご覧になっていってください。橋之介君、この人たちはオランダチームのお兄さんたちよ」愛子先生はボクをお兄ちゃんたちに紹介してくれた。
 
 
「橋之介・ジョーイ・マクブリッジです。こんにちは」
「マクブリッジ?ひょっとして、テレンス・マクブリッジっていう人は君の親戚かな」
「ボクのおじいちゃんだよ」
「なら、僕たち、君のおじいさんとおばあさんを知ってるよ。ヨーロッパの大会で何度か対戦したことがあるから」
「うわー、そうなんだ。なんだか不思議だなぁ」
「君は今日が初めて?一人だけなの?」
「さっきまで他の人たちと一緒に遊んでたんだけど、みんなお昼になったから帰ってしまったの。ボクはお父さんが試合が終わるのを待ってるんだ」
「へえ、じゃあ、お父さんがくるまで一緒にやるかい?」
「わー、いいの?うれしいなぁ」
「よし、じゃあ始めよう。ハシュ・・・、ハシュノスケ?」
「ハ・シ・ノ・ス・ケ、だよ。外国の人は言いづらいみたい。BJって呼んで。おじいちゃんたちはそう呼ぶから」
「BJ?」
「ボクの名前は、橋之介・ジョーイ・マクブリッジでしょ。橋之介の『橋』は日本語だと"bridge"って意味で、ミドルネームが"Joey"だからBJってわけ」
「"Bridge Joy"か、いいね。じゃあBJ、早速始めよう」
 
NECブリッジフェスティバル
さっきはみんなが帰って急に寂しくなっちゃったけど、お兄ちゃんたちと遊んでもらえることになって、なんだかわくわくしてきた。それにしても、お兄ちゃんたちの手はおっきいなぁ。ボクの手はちっちゃいから、カードを持つのがとても大変なんだ。あんなふうにかっこよくカードを持てるように、ボクも早くおっきくなりたいなぁ。
 
NECブリッジフェスティバル
「こらこら。人の手元を見ちゃだめだよ」ボクがじーっと隣りのお兄ちゃんの手に見とれてたら、そのお兄ちゃんがウィンクしながら言った。
「え?」
「ブリッジする時はね、人の手元を見ちゃいけないんだ。そんなつもりはなくても、カードを覗いているみたいに見えるからね。テーブルに出たカードだけを見てプレイしないと、ずるになっちゃうんだよ」ボクは、愛子先生にも同じことを教わったことを急に思い出して、真っ赤になっちゃった。
「そうだったね。さっきも教わったのに忘れちゃった。次からは気をつけるね。ボ、ボク、お兄ちゃんみたいにかっこよくカード出したいなって、見とれてたんだ」
「最初は何も知らないんだから、いいんだよ。失敗しながら、少しずつ覚えようね」お兄ちゃんが笑っていたんで安心した。
ぼんやりしてると、教わったことを忘れちゃいそう。でも、失敗してもいいんだ。
 

お兄ちゃんたちと遊んでいたらあっという間に時間がすぎて、パパが迎えにきた。
「ビクター、BJは君の息子だったのか」
「おやおや、橋之介と遊んでもらっていたんですか。それはそれはどうもありがとう」
パパがお兄ちゃんたちにお礼を言った。パパもお兄ちゃんたちと知り合いだったんだ。
「じゃあ、僕たちはこれから横浜見物に行くね。楽しかったよ、BJ。またね」
「どうもありがとう。ボクも楽しかったよ。さようなら」


「どうだった?」クイーンズスクエアの方に歩きながら、パパが聞いた。
「うん。最初は覚えることがいっぱいで、どんどん難しくなるような気がしてもうダメ~って思ったよ。でも一緒にいた人たちが楽しそうだったから、ボクもなんだか楽しくなっちゃって。そうしたら難しいと思ったことなんかいつの間にか忘れちゃった。そのうち、やり方は覚えたって気がついたよ」
「そうか、よかったな。それに、オランダチームの人に遊んでもらえたなんて、ラッキーだったな」
「お兄ちゃんたち、かっこよかったー。出たカードを全部覚えているんだ。それに、ボクが何を持っているかもだいたいわかるみたいなんだよ。絶対、覗いたりしてないのに。テレパシーでもあるのかな?」
「ははは、テレパシーはいいな。そうじゃなくて、あのお兄ちゃんたちくらいに上手になると、他の人が持っているカードをかなり正確に予測できるようになるだけだよ。テレパシーみたいにね」
「ボクもできるようになるかな」
「うんと上手になったらね」とパパは言ったけど、ボクはやっぱりお兄ちゃんたちには、絶対パパの知らないテレパシーがあるんだって思った。きっとそうだ。訓練したら、ボクだってテレパシーで相手のカードがわかるようになるかもしれない!がんばらなきゃね。
なんだか、急におなかがすいてきた。
「パパ、ボク、おなかペコペコだよ。お昼はお子様ランチがいいな!」今日はとっても楽しいな。

 

 
クイーンズスクエア「ポーラーカフェ」
 
「午後は試合を見学するかい?」パパは、はちみつたっぷりのゆず茶をすすりながら聞いた。ボクはポーラーカフェのスペシャルお子様ランチについてくるクリームあんみつの最後の一口をほおばっていた。ここのあんみつは最高だ。
「ううん。ボク、もっと遊びたいな。午後も体験教室に行っていい?」
「おやおや、飽きっぽいおまえがめずらしいじゃないか。じゃあ、教室が終わる頃に試合会場に来なさい。愛子先生に迷惑かけるんじゃないよ」
「はーい」
「今日は何を覚えたんだい?」
 
NECブリッジフェスティバル
「あのね」ボクは愛子先生の言葉を思い出そうとした。「絵札点の点数を数えられるようになったよ。Aが4点、Kが3点、Qが2点、Jが1点。だからテーブルには全部で40点あるんだよ」
「それからね、2人でやるから、パートナーが勝ってるときは、小さいカードを出せばいいんだよ」
「ほう、なかなかいいぞ。あとは?」パパがうれしそうにボクを見た。
「えーっと、得点の数え方も習ったんだ。ゲームボーナスとか・・・。でも、ボク、まだ1人じゃできないの。だから、午後はそれを練習したいんだ」
 
「そうか、がんばれよ。じゃあ、そろそろ行こうか」パパは立ち上がってお金を払い、ボクたちはブリッジの会場にまた向かったんだ。
 
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