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橋之介のブリッジれぽーと

橋之介のブリッジれぽーと(27)


 

 

みなさん、こんにちは!橋之介です。
あのね、ボクたち今度ウィークリーゲームに出ようかって話してるんだ。大人の人たちとまざってブリッジするのって、なんだかワクワクするよね。
でも、ママとパパは心配みたいなんだ。
出れるといいんだけどなあ…。
2月の終わりの土曜日の昼下がり、今日はママのブリッジレッスンの日。ボクとママは、いつものようにボードやテーブルクロス、それからジュニアくらぶのスタンプを集めてもらったビディングボックスなんかをテーブルの上に並べて、準備しているところ。
あのね、今日のレッスンはいつもとちょっと違うんだよ。どうしてかっていうと、今度ボクたち、横浜ブリッジセンターのウィークリーゲームに参加することになったからなの!すごいでしょ?3月1日はボクたちが通っているベアーズスクールの創立記念日で、その日は学校がお休みになるんだ。で、みんなで遊ぼうってことになったんだけど、エリーちゃんがブリッジのウィークリーゲームに出ようかって言い出して、みんな「大賛成!」ってことになったってわけ。
でもね、ホントはまだちゃんと決まったわけじゃないの。おうちに帰ってから両親に聞いてみたら、ママったら、「そうねえ。ブリッジはだいぶ形になってきたけど、大人のプレイヤーのみなさんにご迷惑をかけないようにきちんとできないと困るわね」って、不安顔 なんだ。パパも、「そうだなあ。ジュニアだけの大会とはわけが違うからな。まだ少し早いんじゃないか?」なーんて言うの。そうこうしてたら、みんなのママたちから次々に電話がかかってきた。どうやら、心配になったのはうちの両親だけじゃなかったみたい。結局、次のママのレッスンの時にウィークリーゲームの心得とブリッジのマナーをお勉強して、ママが大丈夫と思ったら参加していいってことになったんだ。
ちぇっ!ボクたち、そんなにたよりないのかなあ。ちゃーんと、お行儀よくできると思うんだけどな。。ま、いいや。それでママたちが安心して、ウィークリーゲームに行かせてもらえるなら、いいよね!
ピンポーン!
あ、みんなが集まってきたみたい!

「今日はまずウィークリーゲームで注意することを簡単にお話しするわね」早速、ママの説明が始まった。今日のようすでママがやっぱりまだ早いなあって思ったら、ウィークリーゲームに参加できなくなっちゃうから、みんな真剣に聞いてるよ。もちろん、ボクも!
「受付をしたあとは、席を指定されたらその席に、特に指定されなかったら空いている席に座ります。Nに座った人はいろいろお仕事があるから、もしウィーク リーに本当に参加することになったら、みんなはできるだけEW側に座ってね。Nの人はどんなお仕事をするか、わかりますか?」
ボクは勢いよく手を上げた。「はい!公式スコアをつけて、相手の人に確認してもらいます」Nの人はスコア係だもんね。「そうね。ほかには?」ママがさらにたずねると、「ボードの管理をします」カーチャちゃんが付け加えた。「えっ?『ボードの管理』ってなあに?」思わず、ボクはカーチャちゃんを振り返った。
「プレイを始める前に、そのラウンドでプレイするボードかどうかをまず確認するんです。確認したら、ボードを正しい向きでテーブルの真ん中に置いて、それからプレイを始めます」ツキノワ君が説明してくれた。「なあんだ、そのことか。『管理』なんて難しい言葉だから、もっと大変なことかと思っちゃった」「それだけではありませんよ。ラウンドが終わったら、指定のテーブルに自分たちがプレイしたボードを持っていきます」
「そっかあ。ボードを運ぶのも、Nが係なんだね。でも、指定のテーブルってどうしたらわかるの?」
「カーチャちゃんもツキノワ君も、よく知っているわね」ママが目を細めた。「そう、ボードを次に使うテーブルに移動するのもNの役目なの。指定のテーブルはガイドシートに書いてあるから、それを見て確認してね」
「Nって、忙しいんだな。オレはEWかSに座ることにするよ」ホッキョク君が大きなため息をついた。「うん。ボクもそうしよ!ってことは、ボクとホッキョク君がペアになると、まずいね」ボクがそう言うと、みんなが笑った。
「あらあら、ちゃんとみんなができるって約束してくれなくちゃ、OKを出せないわよ。それに、Nの仕事はSがお手伝いしてもいいのよ。2人で協力して確認するようにしてね」「なーるほど、協力するってわけか。それなら、いいや」ホッキョク君もちょっとほっとしたみたい。
「ボードの管理、公式スコアの記入のほかにも、まだお仕事はあるわよ。毎回、ラウンドが始まる前に、対戦相手にまずごあいさつしてから、ペア番号を確認してね。たまに、相手がテーブルをまちがえてしまうこともあるから。それから、EW側に座ってものんびりしていないで、ボードやスコアの確認は自分たちでもしましょうね」ママの説明を聞きながら、ツキノワ君はすごいスピードでメモをとっていた。
「なんだかやることがいっぱいあるけど、『習うよりなじめ』ってことだね!」ボクがそういうと、みんながしーんとなっちゃった。あれれ?また、ボクまちがえた?
「またあ。それを言うなら、『習うより、慣れろ』でしょう…」エリーちゃんがため息まじりにそう言った。「あれえ、そうだっけ?」「まあまあ、慣れるなじむは似てますから。とにかく実際に体験して、みんなで徐々に慣れていきましょう」今日もナイスフォロ ー。ツキノワ君って、やさしいなあ。
「そうね、実際に経験してみないことには、できるようにならないかもね。ウィークリー行ってみるのもいいかもしれないわ」
「あれ?ママ、ウィークリーゲームに行くのOKしてくれる方に変わってきたの?ボクのまちがいも、まんざらじゃあないね!」「まったあ!そんなことなこと自慢するんじゃないの!」いててて・・・。エリーちゃんに、バンって背中をたたかれちゃった。
「じゃあ、説明はこの位にして、少しプレイしてみましょうか。ただし、今日はウィークリーゲームでプレイしていると思ってやってみてね。1ラウンド4ボー ドということにして、1ラウンド終わったらメンバーを交代することにしましょう」ママはそう言うと、ブリッジの大会で使うようなスコア用紙をテーブルの上に置いた。
「うわっ、今日はプライベートスコア用紙のほかにもスコアがあるんだね。ようし、ウィークリーゲームだと思ってやってみよう」

いつものようにカードドローをして、最初の抜け番になったツキノワ君を除く4人がテーブルについた。
「始める前にもう少しお話を聞いてね。プレイする時にも気をつけてほしいことが、いくつかあります」ママがみんなに声をかけた。「大人の人の試合では、制限時間はオークションを始めてからプレイが終わるまで、だいたい1ボード7、8分くらいが目安になっています。1テーブルだけ進み具合が遅れると、全体にご迷惑がかかるから、時間内に終わるように しましょう」「はあい!」みんな元気よく返事をした。
「それから、みんな知っていると思うけど、オークションやプレイ中におしゃべりしないようにね。身ぶりやしぐさでパートナーに情報を伝えることも、ブリッジではルール違反になりますから、その点も注意してね」
「はーい」そう、ブリッジでは身ぶりでサインを出しちゃいけないんだ。
「こういうことはジュニアの大会でも同じね。それから、自分用のスコア用紙にスコアを書いたら、折りたたんで中は見えないようにしましょう。なぜだかわかる?」ママがそうたずねると、カーチャちゃんが「全員同じボードをプレイするからです。ラウンドが変わって、別の相手と対戦するときにスコア用紙を開いたままにしておく と、相手の方がまだプレイしていないボードの結果が見えてしまいますから」と答えた。
「なあるほど。ボク、これって特に意味はないと思ってたけど、そういわけだったんだね」ボクはぽんと手をたたいた。「いやあねえ、橋之介君。最初にみんなでジュニアの大会に出た時に、そう教わったじゃないの!」エリーちゃんが大きな目をまあるくした。「そ、そうだっけ?」
「まあまあ、『習うより慣れろ』、だろ?意味は忘れてたって、橋之介はいつもスコアをほかの人に見えないようにしてるんだし、大丈夫さ」わあ、今度はホッキョク君がフォローしてくれたよ。みんな、やさしいなあ。
「わからないことがあったら、恥ずかしがらずに聞いてみるのがいちばんよ。何かあったら、ディレクターを呼んで聞いてみてね」
「はあい!」ボクたちはもう一度元気よく返事をして、最初のボードにとりかかった。
4ボードが終わって、Nに座っていたカーチャちゃんが結果を書き込んだ公式スコア用紙(の代わり)をEに座っていたホッキョク君に渡した。ホッキョク君は自分のスコア用紙と比べてから、OKのしるしに公式スコア用紙にサインした。なんか、サマになってるよ。 「こうやってサインすると、ほんとにウィークリーゲームに出てるみたいだな」ホッキョ ク君もまんざらじゃあないみたい。
抜け番のツキノワ君とカーチャちゃんが交代して、席替えをした。今度はボクがN。
ちょっと、どきどきするなあ。
「ねえ、さっきの4番目のボード。ボクの4ハートが4メイクだったけど、5メイクできたかなあ?」ボクはキンチョーをほぐそうと思って、ツキノワ君に聞いてみた。
「橋之介君、今、ポストモーテムをすると、マズイと思いますよ」ツキノワ君がそっと言った。「え、何?ポストモーテムって?!」
「ポストモーテムというのは、終わったあとでどうすればよかったかみんなで考えてみることよ。反省会みたいなものね」ママが教えてくれた。「それに、ツキノワ君の言うとおりよ。ポストモーテムは全部終わったあとでやってね。ラウンドの途中で話したら、ああ、あのボードは4ハートがあるのかという具合に、まだプレイしていないボードの情報が伝わってしまうでしょう」
「そっか。ボードのお話をしちゃうと、悪気はなくても、ほかの人にわかっちゃうからなんだ。ボク、気をつけなくっちゃ。それにしても、ツキノワ君は難しい言葉をたくさん知ってるんだね」
「いやあ、この頃、うちの両親からいろんなブリッジ用語をたくさん教わってるんです。2人はすっかりブリッジにはまってしまったので…」ツキノワ君はちょっと照れて、うつむいちゃった。
「みんなで同じボードをプレイするから、どんなボードかわかっちゃうようなことはしないよう、いつも気をつけるってことなんだな。オレもうっかり話さないように気をつけよう」ホッキョク君がそう言うと、カーチャちゃんも 「自分たちがまだプレイしていないボードのことが先にわかってしまったら、楽しみも減っちゃうものね。私も気をつけなくちゃ。うっかりは誰にでもあるもの」と続けた。「よかった。うっかりが心配なのは、ボクだけじゃなかったんだね。みんなで気をつけようね」
2ラウンド、8ボードが終わったところで、おやつにしましょうとママがみんなに声をかけた。今日のおやつはママ特製の白玉ぜんざい!栗も入ってるんだよ。
「う~ん、おもちもいいけど、白玉もいいねえ…。やわらかくって、つるつるしてて、のどごし抜群!栗とあんことのまったりしたハーモニーも絶妙だよね」ボクがそう言うと、エリーちゃんがぷっと吹き出した。「橋之介君って、食べ物についての語彙は豊富なのね。グルメレポーターになれるんじゃない?」エリーちゃんの言葉にみんなが爆笑した。
「え、そ、そおかな?ところで『ごい』って何?」ボクがそう言うと、みんながまたまた大爆笑。ちぇっ、またこのパターンだよう。
3杯目のぜんざいを食べ終わって、ほうじ茶をすすってると、ボクはママがレッスン用に買ったホワイトボードにいろんなことが書いてあるのに気がついた。
「今日教えてもらったことのおさらいだね。いつのまに書いてあったんだろう」ボクがつぶやくと、「ツキノワ君が最初の抜け番のときに書いてくれてたのよ。そこに、私が抜け番のときに書き足したの」カーチャちゃんが言った。「うわあ、どうもありがとう!」
すると、エリーちゃんも立って、何か書き出した。
『元気よくごあいさつしましょう』
うんうん、そうだね!ホッキョク君もこれに続いて、『うっかりに注意!』と付け足した。「うわあ、ボクもなにか書きたあい」
しばらく考えてたら、みんながボクに注目してた。ますます考えこんじゃいそうになったけど、結局ボクはこう書いたんだ。
『とにかく、みんなで楽しもう!』
「そうこなくちゃっ!」ホッキョク君がウィンクしてくれた。えへっ。ボクたち、ほんとにサイコーのチームだと思わない?
「そうねえ、まだちょっと心配だけど、これなら大丈夫そうね」「わあい!!!」ママの言葉を聞いて、ボクたちは歓声をあげた。
「やったね!ウィークリーゲームに行っていいんだね?」ボクがそういうと、「その代わり、算数の復習もちゃんとやってちょうだいね」って、すかさずママに言われちゃった。でも、いいや。みんなと初めてウィークリーゲームに行けるんだもん。3月1日が待ち遠 しいなあ。
 
今日のきょうくん(教訓)
Nのお仕事は忙しいけど、Sと協力してもOK
ポストモーテムはあとで!
『習うより慣れろ』、なじむんじゃないよ。
 
 
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