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橋之介のブリッジれぽーと

橋之介のブリッジれぽーと(13)


 

 

リードのお勉強:その1
みなさんこんにちは、橋之介です。今は冬休み。おじいちゃんとおばあちゃんに会いにイギリスにやってきたよ!久しぶりだしクリスマスもあるから、ボクはわくわくして冬休みになるのを待ってたんだ。英語もおっけーだし、みんなでブリッジするときも、きっとボクも仲間にいれてもらえるよね。そうそう、お料理もとっても楽しみ!
パパの提案
 
「今年のクリスマスはイギリスに行こう。子どもたちも大きくなってきたし、たまには家族のみんなに会いたいからね」11月のある日、晩ご飯のときのパパのこのひとことを聞いて、ボクとウィニーは「ばんざーい」って叫んじゃった。イギリスにいるパパの両親、ボクたちのおじいちゃんとおばあちゃんには、ずいぶん会ってないなぁ。「すてき!」と、ウィニーはうっとりしてる。そっかー、ウィニーは赤ちゃんのときしかイギリスに行ったことないから、覚えてないんだ。
「冬休みに入ったらすぐに出発するから、みんなそのつもりで準備しなさい。今年はアメリカのケイティ一家も来るらしい。もちろん、弟のバージルもね。橋之介、今年はアンディとアダムにも会えるぞ」パパも、なんだかうれしそう。アンディとアダムっていうのはボクのいとこで、双子なんだ。パパのお姉さんのケイティおばさんの息子たちで、アメリカに住んでるの。ってことは、クリスマスにはおじいちゃんちに全員集合ってわけだね。  
 
 
いよいよ冬休み。ボクたちは大きな荷物と一緒に成田空港にやってきた。飛行機の中はタイクツだったけど、ボクはごはんが気に入っちゃった。メインのお料理はチキンかビーフを選べたけど、ボクはだんぜんビーフステーキ!パンにチーズにサラダ、デザートのちっちゃなケーキまでついてるし、ジュースのお代わりだって自由にできるんだ。
フライトのあいだは食事と間食のとき以外、飛行機の中でぐっすり寝ちゃってたら、いつのまにかロンドンのヒースロー空港っていうとこに着いてた。11時間かかったんだけど、なんだかあっというまだったよ。
そしてこんどは、空港から地下鉄を乗りついで、最後はタクシーに乗ったんだ。街にはクリスマスの飾りつけがいっぱい!赤と緑と金色があふれてた。大きな広場にはとてつもなくでっかいクリスマスツリーも立ってた。クリスマスのお買い物をする人たちで、街は大にぎわい。ボクとウィニーが窓に顔をくっつけてながめてたら、パパがなつかしそうに、いろいろな建物を指さして教えてくれた。景色がにぎやかな街からだんだん静かな住宅街になってしばらく走ったころ、タクシーはおっきなお屋敷みたいな家の前にとまった。そう、ここがおじいちゃんちだよね、ボク覚えてるよ!
みんな、久しぶり!
 
「BJ、よく来たわね!」玄関ホールで、いきなり大きな声と一緒にだれかにぎゅうっと抱きしめられて、ボクは前が見えなくなった。イテテ、この声はおばあちゃんだな。そう、ボクはパパの家族には、BJって呼ばれているんだ。橋之介・ジョーイだから、ブリッジ・ジョイでBJなのさ。ちょっと、カッコいいでしょ?
「さあ、よーく顔を見せてちょうだい。大きくなって、ハンサムになってきたじゃあないの!あらあら、そのかわいい子がウィニーなの!さあいらっしゃ い、あなたのおばあちゃんよ」おばあちゃんは早口にしゃべりながら、ボクとウィニーを一緒にぎゅうっと抱いてくれた。「こんにちは、グランマ。おひさしぶりです」ウィニーはこんなときでも落ち着いて、ちょっとひざを曲げてぺこんっておじぎした。「まあ、ちっちゃなレディーだわ。ほんとにかしこそうな子ね!」
「まあまあ、ちょっと待ちなさい。私にも日本からやってきた孫たちにあいさつさせてくれんかね」うしろからおじいちゃんが声をかけて、ボクたちの顔をのぞきこんだ。「やあBJ、久しぶりだな。だいぶ背が伸びたじゃないか。そしてこっちがウィニーだね。美人のママ似だな」ボクは少し緊張して、おじいちゃんと抱き合った。おじいちゃんはとっても背が高いから、うんとかがみこんで、ボクの背中をパパみたいにおっきな手でぽんぽんってたたいてくれたんだ。ウィニーがスカートのすそをつまんで、おじいちゃんにもぺこりとおじぎすると、おじいちゃんは顔をほころばせてウィニーを抱きあげた。
 
 
「いつまでもそんなところに固まっていないで、中に入ったらどう?」家の中から、おもしろがってるような声がした。
「ケイティ姉さん!久しぶりだな」振り返ったパパが大声を出す。アメリカからやってきたおばさん一家が、ホールのソファに座っていた。おばさんの横に座ってる2人の男の子が、アンディことアンドリューと、アダムだね。ボクより灰色がかった毛並みで、見分けがつかないくらいそっくりだよ。たしか、ボクよりひとつ年上だったはず。
反対側では、灰色の巨大なクマ、ジョージおじさんが楽しそうに笑ってる。このおじさんはいつもニコニコして、大きな声でジョークを言うんだ。「やあ、みんな元気そうじゃないか。BJ、アンディとアダムを覚えてるかい?和食で育ってるにしちゃ、大きくなってきたな」アメリカ人のジョージおじさんの話し方は、ボクのパパやおじいちゃんたちとはなんだかちがう。ちょっとエリーちゃん一家を思い出した。そう言えば、エリーちゃんちもアメリカ出身だ。
 
「家族がみんな集まって、今年のクリスマスは特別にすてきね!ほんとにうれしいわ」おばあちゃんが片手でママの肩を抱いて、もう片方の手をパパの腰にまわして言った。「母さんも父さんも元気そうで、こちらこそうれしいよ。さあ、何はともあれ、イギリスのお茶をいただきたいね」楽しそうなパパの言葉をきっかけに、みんなぞろぞろと家の中に入っていった。
いま、お茶って言ったよね?ってことは、お菓子もあるかな。わくわくしてたら、ウィニーがボクのひじをつっついた。「お兄ちゃんたら、ぼんやりして。いま、お茶のお菓子のこと考えてたでしょ」ウィニーのやつ、スルドイなあ。「うんもう!お行儀よくしないと、みんなに笑われちゃうわよ」つんとしたウィニーと一緒に、ボクは急いで大人たちのあとを追いかけた。
サイコーのお茶
 
おばあちゃんが案内してくれた2階の部屋からは、家の裏手にあるきれいな庭が見渡せた。パパとママでひと部屋、ドアでつながったとなりの部屋がボクとウィニーの部屋だ。2つの部屋のあいだに、なんとバスルームまでついてるんだ。
荷物を置いて、身だしなみを整えて(ママとウィニーが時間をかけるので、ボクはじりじりした)、パパについて1階にある食堂まで下りていった。長いおっきなテーブルに白いクロスがかけられて、ほかのみんなはもう席についておしゃべりしてた。そしてワーオ!テーブルの上には、いろいろな種類のおいしそうなものがたーっくさん!サンドイッチ、プチケーキ、ビスケット、クッキー、フルーツタルト、ママがときどき作るスコーン、そのほか初めてみるお菓子も。 そして大きなポットの紅茶とミルクが運ばれてきた。
ママは、ボクとウィニーのお皿にとっても薄いサンドイッチを取ってくれた。中身は、ハム、キュウリ、サーモンに卵。こんなに薄くっちゃ、よけいお腹がすきそう。でも、とにかくいろんなお菓子があるからぜんぶに挑戦してみようと心に決めて、ボクは食べはじめた。少しだけおさとうを入れたミルクティーが、サンドイッチによくあうなあ。あまーいお菓子もサイコー。ああ、来てよかった。
「...なあ、橋之介?」…。
???うっとり食べてたら、急にパパがボクの名前を呼んだので、きょとんとしちゃった。片手にクリームとジャムをのっけたスコーンを持ったまま頭をあげると、みんながボクを見てる。向かいの席のウィニーが、テーブル越しに顔をしかめてみせた。アンディーとアダムが顔を見合わせてニヤッとしたのを見て、ボクはどぎまぎして、むせちゃった…。
「そうか、イギリスのお茶はおいしいもんな。お義母さんのお菓子も最高だし、BJは美食家だから」とジョージおじさんが片目をつぶってゆかいそうに言うと、おばあちゃんがうれしそうににっこりして、みんなも笑った。おじさーん、フォローありがとう。
 
 
「お茶がおいしいのはたしかだが、話にも参加してもらいたいね。おまえが近頃、ブリッジにハマってるって話をしてたんだよ」パパが話を戻してくれた。「そうなの。ボクの友だちも習いたいって言い出して、みんなでママにブリッジを教えてもらってます。みんなどんどんうまくなってるよ。それに、ミニブリッジなら、ウィニーもできるんだよ」
「ほう、そうか。こりゃ楽しみだ。ハナはなかなかいいプレイヤーだからな。さっそく今夜はBJのお手並み拝見といこうか」おじいちゃんがそう言うと、「まあ、あなた。今日は着いたばかりでみんな疲れてるわ。せめてひと晩はゆっくり眠らせてあげないと、頭のキレも鈍っちゃうわよ」と、おばあちゃんがおじいちゃんの腕に手をかけた。
「うちの子たちも、だいぶできるようになってきたわよ」これはケイティおばさんだ。アンディとアダムは無表情だけど、自信はありそう。「子どもたちどうしの対戦もいいわね。あら、ウィニーはまだ無理かしら?」
「いいえ、おばさま。私もママにミニブリッジを教えてもらってますから、それならできると思います」にこにこしながらウィニーが答えた。「それじゃ、明日は家族でブリッジパーティーができるわね。楽しみだわ」
みんなが笑い、またお互いのニュースを話し始めたところで、ボクは次のフルーツタルトに注意を戻した。ブリッジパーティーは楽しそうだけど、ボク、ちゃんとできるかなぁ。って一瞬思ったけど、タルトにのってるフルーツがあんまりおいしかったので、ほかのことはすっかり頭からすっとんじゃった。やっぱ、お茶はイギリスがサイコーだね!
ブリッジパーティー
 
ねえねえ、知ってる?クリスマスのころのイギリスって、3時過ぎるともう暗くなってくるんだよ!日本でも、冬は日は短いけど、ボクとウィニーはほんとにびっくりした。着いた日は時差もあったし、みんなに会ってコーフンしたし、あまり気にならなかったけど、イギリス時間にからだが慣れてくると、すごく昼間が短いことにイヤでも気がついた。
そんなわけで夜が長いから、ブリッジするにはちょうどいい。2日目の夜、たっぷり眠ったボクたちは、元気ハツラツでブリッジパーティーに参加したんだ。おじいちゃんとおばあちゃんは、ふだんはこのひろーいおうちに2人暮らしだから、よくお友だちを呼んでブリッジするんだって。1階の「図書室」が手際よく片づけられて、ブリッジの会場に変身だ。四角いブリッジテーブル3つに、準備ができていた。
この日の夕方は、ロンドン市内に住んでるパパの弟のバージルおじさんが婚約者のクリスティーナさんを連れて休暇を過ごしにやって来た。おじさんは30歳で、お仕事はデザイナー、ふだんは事務所兼自宅でひとり暮らしなんだ。雑誌から抜け出したようなカッコいいおじさんで、ボクはちょっとあこがれてるの。婚約者のクリスティーナさん(みんなは短くクリスって呼ぶけど)は、モデルをしながら女優になる勉強をしてるんだって!金色がかった毛並みがとってもきれいだった。ウィニーは遠慮なくじぃーっとクリスさんをながめて、ぽーっとしてるよ。
 
 
これでウィニーもいれるとペアが6組できるから、それぞれのテーブルで対戦できる。ウィニーはママと、ボクはパパとペアになった。ボクたちの相手はおじいちゃんとおばあちゃんだ。あのね、ナイショだけど、ボク、パパとやるといっつもドキドキなんだ。だって、いいところ、見せたいじゃない?「橋之介、緊張することはないよ。みんなとっても上手なんだから、負けて当たり前さ」とパパが言ってくれたので、ちょっと気が楽になった。いよいよプレイ開始だ。ボクはママに教わったことを思い出しながら、いっしょうけんめいがんばった。おじいちゃんたちはボクの様子を楽しそうにながめながら、なるべくゆっくりプレイしてくれてたみたい。だけど、ボクは途中で一度ミスをしたなと思ったところから、わけがわかんなくなっちゃった。
 
4ボードが終わったところで、ジョージおじさんが立ち上がってのびをしながら、「なんだか、腹が減ってきたなぁ」とつぶやいた。やったー、おじさん、 ナーイス!実はボクもおなかがぺこぺこだったんだ。これを聞いたおばあちゃんが、「そうね。ブリッジも楽しいけど、この辺で切り上げてお食事にしましょう。バージルとクリスが来るのも久しぶりだし、ゆっくり2人の話が聞きたいわ。温めればいいだけになってるから、食事の用意はすぐにできるし」と言ったので、みんなでぞろぞろリビングのほうへ移動しはじめた。その途中、ボクのすぐうしろにはジョージおじさんとママがいたんだけど、2人の会話が聞こえるともなしに聞こえてきた。
「なあハナ、ウィニーは本当に頭のいい子だねぇ。若干4歳にしてこのレベルじゃあ、末恐ろしいぞ。将来はワールドチャンピオンかもしれないな!」おじさんとおばさんは、さっきママとウィニーと対戦してたんだ。「まあジョージったら!それはほめすぎよ。でも、確かにあの子はなんでも覚えがはやいけど…」
ママは自分のことみたいに少し照れてるみたい。そうだよね、ホントにウィニーは妹ながらスゴイんだ。ボクもお兄ちゃんなんだからがんばらなくっちゃね!
いよいよクリスマス!
 
いよいよ今日は12月25日、クリスマスの日だ。こちらにきてから楽しいことやめずらしいものにばかり出会うから、あっという間に時間がたつよ。リビングルームには天井まで届きそうなツリーがあって、キラキラ輝いてるんだ。その下には、めいめいに宛てたプレゼントが12の小さな山を作っている。この山は、ボクたちが着いた日から、毎日少しずつ高くなってるんだよ!毎朝起きてきたらここをながめて、クリスマスを楽しみに待っていたんだ。それに今日のお昼には「クリスマスディナー」っていうのがある。この何日か、家中が台所からのいいにおいでいっぱいだったよ。
 
クリスマスディナーは1時から始まった。ボクは待ちすぎてお腹がぐうぐう鳴っちゃった。みごとなお料理を見たらなおさらだ!
まずは、大人はシャンパン、子どもはアップルジュースで乾杯だ。それからスープが出て、メインディッシュは、おっきなローストターキー!つめ物をしてこんがり焼いてあるんだけど、お肉だけじゃなくて、つめ物もおいしいの。インゲンやニンジンなんかのお野菜も添えて、ボクはおかわりして食べたよ。3度目のおかわりをしようとしたら、おじいちゃんに「BJ、ほかにもたくさんおいしいものがあるよ」って、ウィンクされちゃった。ローストポテトやソーセージ、サラダ、それからケーキやパイも!日本の生クリームのクリスマスケーキも大好きだけど、イギリスのフルーツパイも最高だよ。
ひとつひとつ味わってると、ろうそくの明かりの中、おばあちゃんがしずしずと黒っぽいお菓子を運んできた。てっぺんにはヒイラギが飾られて、まわりに青い炎がゆらゆらしてる。ボク、小さいころに見たことがあるぞ。ウィニーは目をまんまるにしてる 。
 
 「クリスマスプディングだよ。これがイギリスのクリスマスだ」おじいちゃんがそう言って、みんなに切り分けてくれた。黒っぽく見えるけど、食べてみるとドライフルーツの味がする。ちょっぴり大人の味だ。きっとすごーくたくさんの材料が入ってるんだろうね。「10月から仕込むのよね。なつかしいわ。今年もお母さんが作ったの?」とケイティおばさんがたずねた。「もちろんよ。これがわが家の味だもの」おばあちゃんは胸を張った。えーっ、2カ月も前から準備してたの?本格的なクリスマスって、大変なんだね。
 
そのとき、ボクの口の中でガリッという音がして、ボクはあわてて口を押さえた。ぐらぐらしてる歯はなかったはずだけど…。「やったな、橋之介。コインが当たったな。それは幸運のコインなんだよ。大事にとっておきなさい」パパがボクの背中をたたいた。プディングの中にコインが入ってるなんて!びっくりしたけどうれしいな。きっと何かいいことがあるよね。
 
ディナーのあとリビングルームに行って、みんなでプレゼントをひらいた。おばあちゃんは全員に手編みのセーターを贈ってくれた。ひとりで11枚も編むなんて!とってもふわふわで、あったかそうなセーターだ。そのほか、ボクはすてきなペンや、手袋や、帽子、ブリッジの本、おもしろい絵のついたマグカップ、ボードゲームなんかをもらったんだ。おじいちゃんは、イギリスにはめったに来ないんだから何か好きなものを買いなさいって、おこづかいをくれた。ジョージおじさんからは、なんとスケート靴!ボク、滑ったことないけどやってみたかったの。おじさんは子どもたちみんなにスケート靴を贈ってくれた。 太っ腹だなぁ。でも、おじさんのおなかは、ほんとにおっきいんだけどね。ジョージおじさん、このお休み中にみんなをスケートに連れていってくれるんだって!こんなにたくさんプレゼントをもらえるなんて、「棚からぼた餅」じゃなくて「靴下からプディング」?あれ、やっぱ変かな?
それからみんなでクリスマスの歌を歌ったり、ゲームをしたりした。「カラテをやって見せて」って頼まれて、ちょっぴり型を披露したら、大受けで照れちゃった。ほんとはボク、そんなに上手じゃないんだけど。みんなが、ホッキョク君の型を見たら、きっとびっくりしちゃうね。とにかく、ほんとに楽しいクリスマスだった。日本のみんなも楽しいクリスマスと冬休みを過ごしてるかなあ?休み明けにはちゃんと帰るからね!あ、宿題しなくちゃ…
 
今日のきょうくん(教訓)
やっぱり家族ってサイコーだね!
 
 
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