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時間より少し早く4階のミニブリッジ教室につくと、女の先生が2人いて、そのうちのひとりの先生がボクを見て言った。
「橋之介・マクブリッジ君ね。はじめまして、講師の木村節子です。お母様からうかがっているわ。こちらは、アシスタントの向山先生よ。これから楽しくミニブリッジを勉強していってね」
2人ともやさしそうな先生だなぁ。愛子先生もそうだったけど、ブリッジの先生って、みーんなやさしそう。
「はじめまして。橋之介です。どうぞよろしくお願いします」ボクは元気よく先生たちにあいさつした。 |
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はじまりの時間になった。教室にはボクの他に8人の生徒が集まっていたけど、子どもはボクだけ。なんだか、緊張してきた。
「今日は第1回目ですから、まずみなさんにミニブリッジの遊び方を覚えていただきたいと思います。では、4人ずつのグループになって、テーブルに座ってください」
節子先生の説明を聞きながら、少しずつプレイしていく。ミニブリッジは体験教室で教わってからときどきおうちでやってたから、ちょっと自信がある。大人の人たちにまじって教室にいるのが最初はどきどきだったけど、いま教わっていることはぜんぶ知っていることだから、だんだんリラックスしてきた。
使うのはカード、トランプとは言わない。トランプは切り札。4つのスーツ。 は4点、 は3点、 は2点、 は1点で、1つのテーブルには40点ある。いいぞ、いいぞ。前に愛子先生に教わったときには目がまわりそうだったけど、こんどは大丈夫。まだ目がまわってない。っていうか、今日の勉強はボクにはかんたんすぎるかも?
少しずつミニブリッジを教わっていって、初めての人もみんなやり方がわかってきたところで、節子先生が言った。「これでミニブリッジの遊び方はひととおりおさらいしました。それではもっとプレイしてみましょう」 |
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わーい、たくさんブリッジできるぞ。ボクがカードを引くと、すごい手がきた。
絵札点(ハイカードポイント)を書く用紙にみんなが点数を書いていく。0点、17点、2点、22点。
「橋之介君、22点もあるの?すごいわね」
「あれ?でも、合計が41点だよ、もう一度、確かめてみよう」
「0点はすぐわかるから間違いないわ」
「ぼくも17点だ」
あれれ~?やっぱり、まちがえてるのはボクなのかな。他のみんなは、今日が初めてなのに・・・。すごく、あせってきちゃった。「えーと、えーと・・・」 |
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「ゆっくり数えてみましょう、橋之介君」節子先生がやさしく言った。「数えやすい数え方を教えてあげるわね。 と と と が1組でちょうど10点なのよ」
ハンドをよく見ると、 と と と が2組あった。それともう1枚 。そっかー。
「わかった!ボク、21点でした」
「そうね。他にも、 が2枚と が1枚で10点。 が1枚と が2枚で10点。 と が1枚ずつで5点、 と が1枚ずつで5点など、数えやすくする工夫はいろいろあるのよ。自分が数えやすい数え方を試してみるといいわね」節子先生の説明に感心してしまった。 |
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ボクはさっきかんたんすぎるなんて思ったことが恥ずかしくなって、まっかになっちゃった。ちょっとだけ先にミニブリッジをはじめたってだけで上手になったと思いこんでたけど、大まちがいだ。
「あらあら、まちがえたからって気にすることないわよ。まちがえないと上手にならないしね」ボクの顔を見て節子先生が笑った。ボクがほんとはどうしてまっかになってたか、先生は気がついていませんように。
「じゃあ、ディクレアラーは橋之介君だね」17点のダミーが開いた。 |
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「うわー、すごい」思わず、声に出して言っちゃった。これなら13トリックぜんぶ取れそう。ボクはNTでやることにして、慎重にプレイした。13トリックぜんぶ取ると、みんながすごいねって言ってくれた。 |
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「今のハンドは、橋之介君には最初にダミーを見たときから13トリックぜんぶ取れるってわかったわね」横で見ていた節子先生が言った。「実は、コントラクトブリッジにはスラムというのがあるの。13トリックぜんぶ取りますよと宣言するのがグランドスラム、1トリックだけ負けるけど残りの12トリックは取りますよと宣言するのがスモールスラムで、宣言してメイクするとそれぞれ特別のボーナス点がもらえるのよ。スラムやゲーム、スコアのことはこれから勉強していきますが、たまにはこんなすごい手がくることもあることがわかってよかったわね」
グランドスラムって、聞いたことがあったけど、そうか、このことだったんだ。やっぱり、まだまだ勉強することがたくさんあるなぁ。ボクたちはそのあともたくさんミニブリッジをプレイした。さっき節子先生から点数の数え方を教わってから、点数を数えるのがすごく早くなったみたい。+++ で10点。++ で10点。++ も10点。どうしていままで気がつかなかったんだろ。『目からうわさ』とはこのことだっけ?
あっというまに時間が過ぎていった。「そろそろ時間になりましたので、今日はこれで終わりです。みなさん、ミニブリッジの遊び方はよくわかったみたいですね。来週はスコアのつけ方を勉強します。それではまた来週お会いしましょう」節子先生が言った。
ボクはもっとブリッジしたかったけど、おなかもぺこぺこなことに気がついた。
「先生、どうもありがとうございました。さようならっ!」ボクは元気よくブリッジセンターを飛び出した。 |
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家に帰るとみんなお昼を食べないでボクを待っててくれた。
うわぁ、今日のお昼はボクの大好きなパンケーキだ。ボクはあんことはちみつをたっぷりかけて、大きくひとくちほおばった。
「それで、ミニブリッジ講習会はどうだった?」ママの特製ゆず茶をすすりながら、パパがきいた。「あのね、今日はミニブリッジの遊び方だけやったの。だから、先生の説明がよくわかったよ」
「ほう?じゃあ、今日は復習ばかりだったのかい?」ボクはちょっともじもじしちゃったけど、正直に言うことにした。
「あのね、最初は復習ばっかりでボクにはかんたんすぎさ、って思っちゃったの。でもそうじゃなかった。新しいことも教わったよ。ハンドの点数を早く数えられるようになったんだ。あとね、今日、ボク、グランドスラムを作ったよ!」
「ミニブリッジにグランドスラムはないけど、13トリックぜんぶ取ったのね。そういうハンドがたまにはくるってところも、ブリッジの楽しみのひとつよね」ママがおかわりのパンケーキを大皿にのせながら言った。
「同じようなことをしていると思ったときでも、いつでもなにか新しいこともあるんだね。ボク、講習会に行くことにしてホントによかったよ。先生たちもやさしいし!」ボクはミルクをごっくんと飲み干して、おかわりのパンケーキをまた1枚、取った。今日も、もりもり食べるぞう! |
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あわてて点数を数えない。 |
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A、K、Q、Jの組み合わせで計算するとわかりやすい。 |
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グランドスラムはすごい! |
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JCBL注:本文中、横浜ブリッジセンターのミニブリッジ講習会を「土曜日」としておりますが、詳しくは同センターにお問い合わせください。
(ホームページ http://www.yokohamabc.or.jp/ 、TEL:045-316-1193) |
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